水文循環工学

地球規模・地域規模水循環と人間活動との相互作用

人間の社会・経済活動と地球規模・地域規模の水動態との相互作用を分析し、水資源問題の解決に資するために、経済-社会活動を組み込んだ水資源ダイナミクスモデルの開発、作物生産と灌漑、ダムによる利水補給を一体的に取り扱う統合モデルの開発、洪水や渇水などの水災害リスクマネジメントに関する研究を進めています。

教員

堀 智晴 ( Tomoharu HORI )

堀 智晴3教授(防災研究所)

研究テーマ

地球上の水循環と人間活動との相互作用をとらえるため、水循環・水需給と社会経済活動との相互作用分析モデルの開発を進めています。また、洪水・渇水を中心とする水関連リスクの評価と総合的な対策策定の方法論を確立するために、氾濫原内洪水リスクを考慮した治水計画立案手法、災害時の人間行動のコンピュー タモデルの開発を行っています。

連絡先

宇治キャンパス 防災研究所本館S棟 3階S-320D室
TEL: 0774-38-4250
FAX: 0774-38-4250

山田 真史 ( Masahumi YAMADA )

助教(防災研究所)

研究テーマ

研究テーマ・開発紹介

経済・社会活動を組み込んだ地球水ダイナミクスモデルの開発

水資源にまつわる問題を考えるためには、地球規模の視点が欠かせなくなっています。その第一の理由は、水資源問題の支配現象である水循環が地球規模 の自然現象である点です。さらに、地球規模に発達した物流・経済ネットワークによって、局所的な水問題の影響が地球規模に拡大する可能性が高まっている点 にも注意しなければなりません。また、温室効果ガスの排出のように、水循環・水資源事情に影響を与える変動要因の発生源が地球規模に拡大しており、1国あるいは1地域での対策のみでは、変動を制御しきれなくなりつつある点にも注意が必要です。

一方で、 水資源問題は、きわめて地域的な問題でもあります。資源としての淡水そのものの運搬には限界がありますし、地表に到達した雨水の移動範囲は一般に流域というスケールに限定されます。したがって、水資源の確保・保全のための直接的対策の効果は、通常、一定の範囲に限定的なものであり、対策・管理計画は地域スケールでの問題となります。

以上のように、今後、水資源問題を考えていく上では、異なる時間・空間スケールで水循環という自然現象と、人間活動という社会・経済現象を統合的にとらえ、分析していく必要があります。このため、当研究室では、マクロなスケールで水循環現象を把握するとともに、人間の社会・経済活動とリンク した統合型水資源ダイナミクスモデルの開発に取り組んでいます。

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水資源・人口・工業・農業生産を考慮した水資源ダイナミクスモデル

数値作物成長モデルの開発とダムによる灌漑補給操作の高度化

水資源が最も大量に必要とされる活動が食糧生産です。しかし、農業用水使用の実態や、気候変化の影響など不明なことも多く残されています。そこで、気象や土壌水の条件から日々の作物の成長をコンピュータ上でシミュレーションするモデルを開発し、様々な条件下で収量を最大にできるような土地と水資源の最適配分を求める手法について検討しています。また、数値作物モデルから得られる灌漑必要水量の情報を用いて、ダム貯水池からの水補給を高度化する操作手法の開発を進めています。

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ダム貯水池によるによる農業用水供給モデル

住民意識と詳細な地物情報を組み込んだ水害避難行動モデル

温暖化の進行に伴って現在までに整備された防災施設の能力を超える水災害の発生が懸念されており、水防災においては、水工施設による対応と並んで、地域社 会や住民による災害対応が壊滅的な被害を防止するために重要となってきています。また、地球規模で見ると、地形的・経済的あるいは環境的要因から、大規模な施設対応が困難な場合もあり、社会による災害対応を中心に地域防災を考えざるを得ない地域も多くあります。

そこで、 主として洪水を対象とし、発生地域の住民の情報伝達や避難を含む災害対応行動をコンピュータ上でシミュレーションするモデル化を進めています。こうしたコンピュータモデルを駆使することにより、水災害に対する防災社会システムが、災害時にどのように機能するか、現状に問題点がないかを様々な条件の下で分析することができるようになります。

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詳細な街路ネットワークを組み込んだ水害避難行動モデル

研究室ウェブサイト

http://gwd.dpri.kyoto-u.ac.jp