専攻の理念

本専攻の理念は次の5つに集約される。

1.都市情報通信技術の革新と社会基盤の高度化

情報通信技術の著しい発展により、インテリジェント交通システム(ITS)、危機管理システム、災害情報システム、都市物流システム等に代表されるように、都市社会システムの高度化が実現されつつある。今後、都市IT(Information Technology)の発展により、都市社会システムを支える多様な社会基盤の高度化が可能である。

都市社会工学専攻では、情報通信技術をはじめとして環境、バイオ、ナノテクノロジー等の先端分野における急速な技術革新の成果を融合し、都市社会システムの高度化の実現を目指す。

2.高度情報社会における災害リスクのマネジメント

社会・経済の高度化にともなって都市社会システムはより大きなリスクに直面する。自然災害、人為的災害、さらには金融危機および食糧危機という新しいタイプの人為的災害等の広義の災害リスクに対処するためのリスク対応技術の高度化・システム化,およびこれに対応する新たな情報システムの構築が要請されている。都市社会工学専攻は、このような広義の災害リスクの発生による被害の発生を制御するリスクコントロール技術と、災害時における被害の発生を最小限に抑止するためにリスクマネジメント、リンスクファイナンシング技術の発展に大きく寄与することが期待される。

3.都市基盤のマネジメント技術の発展

人々の生活環境に対する二一ズが多様化し、都市基盤に対する人々の要求やコンフリクトを調整することが必要である。また、長期的な視点から、都市基盤の維持・補修、更新というライフサイクルの効率的なマネジメントが要講されている。さらに、構築しようとする都市社会システムが、地域・地球環境と共存でき、持続可能なものであるかをも評価できなければならない。特に、21世紀は高齢社会が確実に到来することを踏まえ、従来の都市機能優先から、「安心・安全の都市」さらには高齢者が豊かな生活を享受できる都市基盤を構築することが要請される。これら都市基盤の総合的マネジメントを達成するため、単に工学の分野にとどまらず、社会科学、人文科学をも包摂しうる総合的なマネジメント技術としての都布社会工学の発展が期待される。このニーズに対応することにより、新たな社会ニーズに対応した社会基盤整備に必要となる各種マネジメント技術の開発、並びに専門的知識とり一ダーシップを兼ね備えた人材の育成を目指す。

4.国際化時代に対応した社会基盤整備

情報通信技術の発達によって、都市は世界的な競争に巻き込まれる。そのなかで、国際的に競争力のある港湾、空港、遣路などの社会基盤整備を進め、社会経済的な発展を成し遂げなければならない。そのための都市政策、都市マネジメントが必要となる。また、世界的な建設・コンサルタント市場のビッグバンに対応するためには、プロジェクト技術の標準化、プロジェクトマネジメント、契約、入札、カントリーリスク等の管理技術等、幅広い分野にわたって技術・人材を蓄積する必要がある。また、産業界との協同研究、社会人の再教育を含めてプロジェクトのマネジメント技術の高度化を図る必要がある。そのため、国際化時代に対応した社会基盤整備に必要となる各種マネジメント技術の開発、並びに専門的知識とリーダーシップを兼ね備えた人材の育成を目指す。

5.有限エネルギー資源論に立脚した都市構造

「石油ピーク論」にみられるように有限エネルギー資源論に立脚した都市構造の変化が議論され始めている。安心・安全で文化的な都市基盤を支えるために必要なエネルギー資源の減耗と、地球温暖化の影響は遠からず都市構造の変化を引き起こすと考えられる。これに備えるには「都市ガバナンス」および「都市基盤マネジメント」という概念の下での、都市エネルギー資源論を新たに構築すると共に、当該分野における専門的知識とリーダーシップを兼ね備えた人材の育成を目指す。