地域水環境システム

持続可能な開発のための統合的水資源管理

水は人類にとって最も貴重な天然資源の一つですが、時間的にも空間的にも偏在しています。人類は自然の水文循環システムを改変し、増加する水需要を満たしながら、これまで発展を遂げてきました。過去の経験を踏まえ、社会経済的な変動や気候変動下における持続可能な発展を促進する統合的水資源管理の概念を展開します。

教員

田中 賢治 ( Kenji TANAKA )

田中 賢治

教授(防災研究所)

研究テーマ

都市域、水体、植生、農耕地を考慮した陸面過程スキーム(SiBUC)を開発し、さらに本モデルを様々な気象モデルと結合し、全球規模から大陸規模、領域規模など様々なスケールでの水・熱循環過程を解明・予測するための研究を進めています。

連絡先

宇治キャンパス 防災研究所S-426D
TEL: 0774-38-4246
FAX: 0774-38-4246
E-mail: tanaka.kenji.6u@kyoto-u.ac.jp

( Kazuaki YOROZU )

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准教授(防災研究所)

研究テーマ

水循環における大気―陸面間の相互作用に関する研究、人間活動を考慮した土壌水分モデリングに関する研究、陸面過程モデルの水資源問題へ の応用に関する研究

連絡先

E-mail: yorozuimage_atmark.gifhywr.kuciv.kyoto-u.ac.jp

峠 嘉哉 ( Yoshiya TOUGE )

特定准教授(防災研究所)

研究テーマ

連絡先

宇治キャンパス 防災研究所S-424D
TEL: 0774-38-4249
E-mail: touge.yoshiya.2z@kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

統合水資源管理モデルの開発

分布型流出モデル、陸面過程モデル、地下水モデル、水質モデル、土砂輸送モデル、食物連鎖モデル、作物生育モデル、貯水池操作モデル、社会経済モデル等から構成される「統合水資源管理モデル」を開発しています。本モデルは物理的水循環モデルをベースに、いわゆる自然の水循環を記述するだけではなく、貯水池による洪水流量の調節、各セクターからの水需要の推定、その需要を満足する貯水池からの放流といった人工系の水循環も合わせて記述でき、社会経済モデルにより社会構造の変化を取り入れれば社会条件と自然条件の双方を考慮した総合的な水資源管理が可能になります。
山岳域から沿岸域までの流域一環とした解析、湿潤域から乾燥域まで様々な気候帯での解析、地域規模から全球規模まで様々なスケールでの解析、貧観測流域での解析を可能とすべく、世界の様々な機関で整備公開されている各種地理情報、統計情報、衛星観測情報、地上観測情報、気象モデル出力情報を統合します。現在の水循環システムの信頼性診断、水資源管理支援、将来気候変動下での洪水リスク、渇水リスク、生態系リスクの評価並びにリスク低減策の検討等への応用を目指します。

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図-1  統合水資源管理モデルの概念図

気候変動監視およびリスク評価

従来、災害の発生は対策の実施を決定する契機となってきましたが、非定常条件下では、外力が時間とともに大きくなることがあるのでこれを見据えた対策が不可欠です。水関連災害外力を監視するためのモニタリング手法を開発するとともに、適切な政策決定が行なえるよう気候変動による将来の水関連災害リスクの評価に取り組んでいます。

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図-2  年降水量と年最大日降水量の変化傾向(有意水準5%)(使用資料は観測開始から2014年8月4日まで)

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図-3  1940−1964,1965−1989,1990−2014に区分し,それぞれの日降水量100mm以上の資料(POT)からリターンピリオド(再現期間)100年の確率水文量を求めると,年代とともに確率水文量が大きくなっていることがわかる.

水資源への気候変動影響

地球温暖化により降水量やその時空間分布が変化し、冬季の降雪が降雨に変わる可能性があります。これにより、例えば、河川流量の流況が大きく変化する可能性があります。将来の社会経済シナリオや気候シナリオを踏まえた水需要の変化を考慮しつつ、我が国および世界の主要河川において将来利用可能な水資源量の評価に取り組んでいます。

地下水管理

地下水資源の枯渇が世界各所で問題となっています。陸面過程モデルに涵養過程、地下水取水過程を組み込み、地下水貯留量変化を追跡するモデルを開発しています。気候条件、地形・地質条件に加え、土地利用の影響を受ける地下水涵養量を踏まえた持続可能な水資源管理を実現するための土地利用や地下水取水のあり方を検討しています。

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 図-4  潅漑必要水量の全球分布(現在気候)

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図-5  潅漑必要水量の将来変化の全球分布(将来気候/現在気候)