地震ライフライン工学
地震は、ライフラインをはじめとした様々な社会基盤に様々な被害をもたらします。社会基盤は、個々が単独で機能する場合は少なく、そのほとんどが相互に連携し合い、システムとして機能しています。したがって、システムの一部でも深刻なダメージを受けることによって、都市の機能が大きく損なわれることになります。
本研究室では、断層近傍での強震動予測から人的被害発生のメカニズムの解明、さらには強震動と津波の複合作用にいたるまで、社会基盤に影響を及ぼすすべての要素について、相互の連関性を最大限に生かした効果的な地震防災対策を実現するための研究にとりくんでいます。
教員
清野 純史 ( Junji KIYONO )
教授(工学研究科)
研究テーマ
主に大都市直下で発生する地震を対象として、断層近傍の地震動の時空間分布特性と伝播経路、地盤による増幅特性について研究しています。さらに、実際の防災対策策定の立場から、地震時の人的被害発生メカニズムの解明や人間行動に関するシミュレーションもおこなっています。
連絡先
桂キャンパス C1棟 1階 137号室
TEL: 075-383-3249
FAX: 075-383-3253
E-mail: kiyono.junji.5xkyoto-u.ac.jp
古川 愛子 ( Aiko FURUKAWA )
准教授(工学研究科)
研究テーマ
構造物の破壊挙動解析に基づく耐震限界性能の把握とその対策工法の開発を目指して、地震時における構造物の弾性挙動から崩壊までの、破壊挙動の一連のプロセスを3次元で再現できる新しい数値解析手法の開発に取り組んでいます。また、振動モニタリングによって構造物の損傷を検出するための理論・ツールの開発などにも取り組んでいます。
連絡先
桂キャンパス C1棟 1階 136号室
TEL: 075-383-3250
FAX: 075-383-3253
E-mail: furukawa.aiko.3wkyoto-u.ac.jp
研究テーマ・開発紹介
京都盆地における地震動特性の数値シミュレーション
地震によって発生する揺れは、近接した2地点の間でも大きく異なることがあります。この現象は、地盤深部の幾何学的な構造が主要な原因であることが知られています。
本研究室では、地盤の三次元的な形状や増幅特性を考慮した地震動シミュレーションをおこなっています。
図-1 京都盆地における地震動特性の数値シミュレーション例
人的被害発生メカニズムの解明とシミュレーション手法の開発
地震による人的被害は、構造物の損傷が原因となって引き起こされます。しかしながら、構造物の損傷が引き金となって人的被害の発生にいたるまでには、たくさんの要素が複雑に絡んでいます。
たとえば、家屋の中にいる人は、建物自身の崩壊だけでなく、家具の転倒によっても被害を受けます。 また、地震による軌道の損傷によって列車が脱線し、車内の人々が死傷する可能性もあります。 さらには、地下街などの閉塞空間においては、地震による停電や火災が原因となって、人々がパニック状態に陥り、その結果人的な被害が発生することもあります。
本研究室では、これらの地震による構造物の損傷が間接的な原因となって引き起こされる人的被害の発生メカニズムの解明と、効果的な対策を検討するための数値シミュレーション手法を開発しています。
図-2 落橋部へ進入した列車の挙動のシミュレーション
図-3 超高密度状態における群集挙動のシミュレーション
地震時における組積造構造物の破壊挙動解析
自然災害による世界の死者の約6割は地震により亡くなっており、地震による犠牲者の大多数が耐震性の低い組積造の倒壊によって亡くなっている。現在でも、世界の約6割もの人口が組積造に住んでおり、地震の度に多くの組積造が壊れ、多くの尊い命が失われている。以上のことから、自然災害による死者を軽減するには、地震による組積造の崩壊を防ぐことが重要であると考えられる。そこで、構造物の破壊挙動を3次元で再現できる新しい解析手法を開発し、組積造の崩壊メカニズムの解明と、構造崩壊による人的被害の発生メカニズムの解明を試みている。また、安価な材料を用いた補強案について検討を行っている。
図-4 組積造構造物の破壊挙動解析結果の一例
マイクロ起振器による構造物の損傷検出手法の開発
地震では非常に多くの構造物が様々なレベルの被害を受けます。また、構造物は風化や降雨の影響によって年々老朽化し、微小な損傷が累積されていきます。そのため、次の大地震での悲劇的な惨事を避けるためには、既存構造物の耐震診断をおこない、適切な耐震補強をすすめておくことが不可欠です。
本研究室では、一般の家屋や小規模な土木構造物を主な対象として、小型起振器によって加振し、その応答に対して高度なデータ処理を施すことで、迅速な耐震診断を低コストで実現するシステムの研究開発をおこなっています。
津波発生源の複雑性に関する防災学的研究
我が国で最大の津波災害は、1896年明治三陸大津波です。約22000人が犠牲になったこの災害は津波地震やぬるぬる地震と呼ばれ、地震による揺れが小さいにも関わらず巨大な津波が発生しました。また、東北地方太平洋沖地震では、震源断層において、揺れを体感できるような短周期の地震動を生成する領域と震源断層の大きな滑りによって津波を生成する領域が一致しませんでした。本研究では、このような津波発生源の複雑性に関する研究を防災の視点から実施します。
公共土木施設の津波による被害予測に関する研究
公共土木施設に被害をもたらす地盤の液状化は、地震動ではなく、津波によって発生する場合があります。東北地方太平洋沖地震に伴って生じた津波のように10mを超えるような巨大な津波が来襲する場合にはその危険が高まります。本研究では、津波による地盤の液状化や地震動と津波の複合作用による地盤の液状化に関する研究を実施します。