地球資源システム

人類が直面する「地球と資源」に関わる課題への挑戦

世界が情報社会へと変貌を遂げつつあるにもかかわらず、人類が古来より活用してきた資源・エネルギー需給の逼迫に加えて、地球環境汚染、地震等による自然災害など、"地球と資源"に関わる深刻な課題が顕在化しつつあります。このような人類と地球に関わる多様な課題について地球科学的視点から理解し、工学的解決を模索する「地質工学」の役割がますます重要となっています。地球資源システム分野では、石油・天然ガスや地熱などの資源・エネルギー開発、地震現象の理解、地球環境保全、防災、土木構造物の建設など、多様な課題について幅広い研究を進めています。

教員

林 為人 ( Weiren LIN )

林 為人

教授(工学研究科)

研究テーマ

甚大な地震・津波災害を引き起こす断層破壊のメカニズム解明、社会経済の持続的な発展の基礎となる天然エネルギー資源の開発、また地球環境保全にかかわる温暖化ガスや放射性廃棄物の安全な処分のために、地下・海底下深部地層の応力状態と物理的性質を正しく評価することが不可欠です。したがって、大深度掘削のコア試料や物理検層データなどを用いて、より信頼性の高い原位置応力の計測を行うとともに、大深度下の高圧・高温条件下における岩石の物理的性質を評価する実験的研究に取り組んでいます。また、これらの計測手法の高度化研究も進めています。

連絡先

桂キャンパス C1棟 1階109号室
TEL: 075-383-3201
FAX: 075-383-3203
E-mail: lin@kumst.kyoto-u.ac.jp / hayashi.tameto.6s@kyoto-u.ac.jp

石塚 師也Kazuya ISHITSUKA )

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講師(工学研究科)

研究テーマ

地殻の変形や地殻内流体挙動の把握とそのメカニズムの理解は、資源開発や防災の様々な場面で重要となります。また、これらの地殻や地殻内での力学的挙動には、地下構造から構成岩石の特性まで様々なスケールでの物理的な性質やその分布が関係します。そのため、計測や数値計算等を用いて、地殻や地殻内流体の状態把握や挙動メカニズムの解明を目指して、研究を行っています。

連絡先

桂キャンパス C1棟 1階108号室
TEL: 075-383-3202
FAX: 075-383-3203
E-mail: ishitsuka.kazuya.4w@kyoto-u.ac.jp

神谷 奈々Nana KAMIYA )

講師(工学研究科)

研究テーマ

連絡先

桂キャンパス C1棟 1階110号室
TEL: 075-383-3403
E-mail: kamiya.nana.4h@kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

地震断層掘削や石油坑井における三次元原位置応力状態の解明

南海トラフなどの海底にあるプレート境界や陸上の活断層の活動により、大地震が繰り返し発生しています。地震発生のサイクルにおいては、応力が次の地震発生までに震源断層とその周辺に蓄積し、地震時に急激に解放するとされているが、応力と地震の定量的な関係はいまだに解明されていません。一方、石油・天然ガス等の地下エネルギー資源を開発する坑井においては、坑内安定性の確保や水圧破砕で造成するフラクチャーの方向制御のために、深部地層中の応力状態に関する情報を知ることが不可欠です。本研究室では、地球深部探査船「ちきゅう」による地震断層掘削や石油開発の坑井から取得されたコア試料の計測や各種検層データの解析等を用いて、地球深部の三次元原位置応力状態の解明を行っています。

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図-1 岩石コア試料を用いた応力計測の例(左、Byrne et al., 2009 GRL)、世界最高の掘削能力を誇る深海科学掘削船「ちきゅう」(右).

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図-2 南海トラフ地震発生帯掘削(NanTroSEIZE)における応力空間分布の研究例(Lin et al., 2016 Tectonophysics).

岩石の物理的性質の評価

地球資源の探査や開発、断層運動の解明において、岩石の物理的特性の理解は必要不可欠です。特に掘削の岩石コア試料や坑井の検層データを用いた評価は、対象地層の熱物性や比抵抗、弾性波速度といった岩石物性を直接的に理解する最も重要な手段です。そのため、本研究室では、岩石試料や坑井データを用いた物理的特性の評価を通じて、対象地域の地質的および地球物理学的特性の解明を行っています。

具体的な例としては、2016年熊本地震を引き起こした布田川断層近傍で掘削された坑井を用いて、温度や熱物性、比抵抗特性等の評価を行っています。また、より多様な範囲・条件での計測を可能にするために、カッティングスを用いた計測手法の開発や高温高圧下での計測を行っており、これにより地殻の物理特性の解明を目指しています。

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図-3 熊本地域の坑井での計測風景(左)、コア試料を用いた熱物性の計測例(右).

深部地熱資源評価のための温度・物性分布推定

地下深部に存在している超臨界地熱資源の開発が可能となれば、従来よりも多くのエネルギーを得ることが可能となり、さらには二酸化炭素排出量の削減にも貢献することが可能となります。そのため、掘削地点の選定のための有望地域における深部地熱資源評価が重要となりますが、原位置のデータが限られている点や物理現象のメカニズムに不確実性があることが課題となっています。本研究室では、地熱地域で取得された検層データや物理探査データを基に、機械学習や岩石物理モデル等を用いて、物理的なメカニズムの不確実性を考慮した深部地熱資源評価手法の開発を行っています。また、開発した手法は有望地域に適用し、手法の評価を行っています。

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図-4 深部地熱システムの概念図(左、Okamoto et al., 2019 Geothermics).葛根田地域で推定された3次元温度分布(右、Ishitsuka et al., 2018 GRSL).

地表変動を用いた地下のモニタリング

地表変動は地下の力学的変化や地下構造を反映するため、地表変動を高精度で捉え、解析を行うことで地下の情報を知ることができます。特に干渉SAR解析技術の発達により、周期的かつ空間的に密に地表変動を推定することが可能になりつつあります。これまで、このような高空間解像度で地下の情報を反映しているデータは類を見ません。本研究室では、地下資源開発や地下水流動、地震等の自然現象に起因する地表変動等を対象にして、干渉SAR時系列解析により、地表変動の詳細なモニタリングを行っています。また、推定した地表変動データの解析により、対象地域の地表変動メカニズムの理解を進めるとともに、より高精度に地表変動を推定するための解析手法の開発も行っています。

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図-5 干渉SAR時系列解析によって推定されたバンコク市の2007年11月~2010年12月間の年間地表変動量(左),時系列地表変動量(右)(Ishitsuka et al., 2014 G-cubed).

研究室ウェブサイト

https://earth.kumst.kyoto-u.ac.jp/