カリキュラム(平成22年度以前)

博士前期課程カリキュラム方針

都市問題に関わる様々な共通知識を提供するコア科目群とともに、専門に特化した3種類の分野別の科目群(都市社会計画群、ライフライン工学群、社会基盤マネジメント群)を設定しています。

学生は、コア科目により都市問題に関わる共通認識を養うとともに、いずれかの専門科目群を選択してその履修をおこなうことになります。

このカリキュラムでは、コア科目を通じて現在の都市が有している問題とその改善策についての共通知識を育成することにより、学生に自らの進路に対する明確な意識を持たせた上で、分野別専門科目の履修により、高度な専門知識を習得させることをねらっています。

講義科目に並行して、プロジェクト調査や企業・海外研修を自主的に企画・実施し、結果をまとめて発表するセミナー形式の科目(キャップストーン・プロジェクト、自主企画プロジェクト)を開設することで、学生に自主性と積極性を持たせるだけでなく、レポート作成、プレゼンテーション、ディスカッション能力を最大限に引き出してもらいます。

都市社会工学セミナーでは、大学院入学時に学生が指導教官と綿密に相談して学習・研究計画を作成し、学会発表、論文発表、企業・海外研修なども修了のための評価に考慮するなど、講義科目以外の日常的な学習・研究活動を重視します。

さらにカリキュラムを運用面から特徴づける方策として、一連の関連科目グループをひとまとめにしたコースを設定し、これらを修得した学生に対してコース修了のCertificateを与えます。このコースは、専攻の学生だけでなく、社会人技術者の再教育の場としても機能させるとともに、高度専門技術を持った人材を輩出するための専門職大学院設置への端緒と考えています。

博士前期課程カリキュラム一覧

都市社会工学基本論群<コア科目>

都市社会計画群

ライフライン工学群

社会基盤マネジメント群

カリキュラム科目内容説明

都市社会工学基本論群<コア科目>

  • 都市社会情報論
    情報通信技術の著しい発展により、インテリジェント交通システム(ITS)、危機管理システム、災害情報システム、都市物流システム等に代表されるように、情報の活用による都市社会システムの高度化が実現されつつある。都市における情報の価値とその影響について工学的、経済学的評価手法を用いて論じるとともに、高度情報化・知識集約型社会における都市システムの整備・運用・管理のあり方について講述する。

  • 人間行動学
    都市地域計画、運営にあたっての基礎的情報を得ることを目的とした人間行動の分析方法論を論じる。交通行動、公共空間における人々の挙動と心理、「クルマ社会」の背景にある社会心理と結果としての行動パターン、合意形成の過程等を対象とし、それらの特徴を論じるとともに、分析の基礎となる認知理論、社会的行動理論、意思決定理論等を講述する。また、データを用いた定量的分析手法を、具体例を用い解説する。
  • ライフラインマネジメント工学
    都市基盤施設の根幹をなすライフライン系の防災課題と防災技術、災害時のライフラインマネジメント、およびその理論体系を講述する。対象とするライフラインはガス・上下水道・電気・通信・交通網などとする。過去の被害事例から学んだライフライン地震工学の展開と技術的成果、それを支えるマネジメントと安全性の理論等について解説する。さらに、ライフライン網のライフサイクルコストを考慮した信頼性評価法や補強戦略などについての基礎理論を講述する。
  • 交通情報工学
    情報通信技術の活用により、交通システムの安全性・効率性・信頼性の向上及び環境負荷の軽減を企図した工学的方法論について講述する。良質なリアルタイム交通データ獲得に向けた新たな取り組みについて述べるとともに、交通需要の時空間的調整方策、複数交通モードの融合方策ならびに交通安全の向上施策について詳述する。さらに、施策評価の方法論や関連する基礎理論についても解説する。
  • 都市基盤マネジメント工学
    国際的競争力のある、持続可能な都市社会を構築するための社会基盤のあり方と特徴を示すとともに、都市における、円滑な交通や良好な環境などの生活の質を確保しながら、都市の社会経済的発展を促進するような社会基盤の整備およびマネジメント方策について論じる。また、ライフサイクルコストとライフサイクルアセスメントの考え方を社会基盤整備に取り入れ、これからの社会基盤整備のあり方について講述する。
  • 都市衛生工学
    生(いのち)を衛(まも)る工学を定量的に理解することを目標とする。例として、水道水や食品をとりあげ、その微生物や化学物質による人の健康リスク問題を概説する。まず、国・世界レベル、都市・流域レベル、家庭・個人レベルでのリスクの種類と発生状況を示し、扱う場を明確化する。その後、リスク評価の方法、許容リスクレベルの設定法、および工学的安全確保法について論ずる。特に微生物リスクにおいては、人・都市と微生物との共存・競合関係を認識する必要性を重視して講述する。
  • 都市社会環境論
    都市環境は自然環境だけではなく、生活、生産、文化、交通などの社会活動にかかわる全ての環境を含むアメニティである。この都市環境の便益と費用について、環境経済学による基礎理論を論じ、次に消費者余剰法、旅行費用法、仮想市場法、ヘドニックアプローチなどの環境計測手法を講述、演習をおこない、さらに都市政策、交通政策分野における環境政策を考察する。
  • 公共財政論
    中央政府あるいは地方自治体における予算とその執行に関わる公的財政の考え方について、公共経済学、都市経済学の分野における基礎理論や分析モデルを交えて説明する。さらに、地方分権下における新しい公的財政論の考え方について解説する。具体的には、行財政構造、費用便益分析、行政評価、バランスシート、インフラ会計、一般均衡モデル、財政的外部経済性、租税システム、アセットマネジメント、経済成長モデル等に関して具体的事例をあげながら説明する。
  • ジオマネジメント工学
    都市の再生をメインテーマとして、主に地下空間と地下構造物のマネジメントについて講述する。具体的には、各種地下空間の構造的な特徴、これまでの地下空間開発の経緯と利用状況、ならびにそれに起因して発生する問題を実例に基づき説明した上で、既存施設の維持補修・リニューアルとその有効活用について説明する。
  • リスクマネジメント論
    安全でゆとりある国土や都市・地域の整備の仕方を、計画論的に検討していくためにはリスクマネジメントの科学が不可欠である。このような観点から、多様なリスクを伴う都市・地域における災害や資源・環境の多様なリスクをマネジメントすることの重要性に触れるとともに、リスクコントロール、リスクファイナンシングの視点も踏まえた総合的なリスクマネジメントの方法論について説明する。併せて、多様な主体間の紛争やコンフリクトのメカニズムを分析するための考え方や手法を説明し、住民参加型の都市計画策定のプロセスを例にとりながら、計画のリスクを軽減するための合意形成の具体的な方法に関しても解説する。
  • 構造デザインマネジメント
    自然環境や災害に対する安全性やリスクを踏まえた都市基盤施設の構造設計の方法論を講述する。荷重や構造強度のばらつきを確率統計的に取り扱う信頼性理論について述べるとともに、これを応用した限界状態設計法、荷重係数設計法を紹介する。さらに地震や風荷重による構造物の動的応答に基づいた構造設計法の基本を述べると共に、荷重の発生頻度に基づいて定められた要求性能に従って構造設計を進める性能設計法についても説明する。
  • 河川流域マネジメント工学
    河川流域及び都市の人と自然の潜在能力の発展や持続可能な共生を考えるために重要な基本的事項として、流域の形成過程、生態系を含む近年の河相変化とその要因分析、湖沼の水温・水質の季節・経年変化と水管理、河川流及び河道内の土砂動態解析法と環境修復流れの定量的評価への応用、最近の治水・利水・河道計画の動向、大都市内の水供給・排水系のモデリングなどについて講述する。
  • 自主企画プロジェクト
    受講生の自主性、企画力、創造性を引き出すことを目的とし、企画、計画から実施に至るまで、学生が目標を定めて自主的にプロジェクトを推進し成果を発表する科目。具体的には、企業でのインターンシップ活動、国内外の大学や企業における研修活動、市民との共同プロジェクトの企画・運営などについて、その目的、方法、成果の見通し等周到な計画を立てた上で実践し、それらの成果をプレゼンテーションするとともに報告書を作成する。
  • キャップストーンプロジェクト
    学部および修士で学んできた基礎的素養を総合的に活かして、都市社会における様々な課題に関するプロジェクトを企画・立案する。具体的には、都市づくり、河川流域計画、ジオフロント計画、交通計画、港湾計画等各種計画の立案、防災まちづくり、水辺環境整備など、実問題を想定し、情報の収集と分析、それに基づくプロジェクトの実践と効果の評価をおこない、一連の成果をまとめてレポートを作成し,プレゼンテーションをおこなう。
  • 都市社会工学セミナー
    都市社会計画、都市基盤システム工学、交通マネジメント工学、ライフライン工学、社会基盤マネジメント工学、都市国土管理工学に関わる国内外における最先端の研究についてその動向と内容を講述するとともに、具体的な特定の課題について、研究計画の建て方、情報の収集、研究の進め方とそのまとめ方と発表方法について個別に指導をおこなう。単位は,在学中の国内外で開催される学会での発表と質疑、研究室ゼミでの発表、講習会への参加などの状況を記載した報告書を提出し,報告書を専攻長及び指導教官が総合的に評価することで認定する。

都市社会計画群

  • 交通ネットワーク工学
    効率的で信頼性の高い交通ネットワークを構築するための計画原論と、計画を科学化するためのシステムズ・アナリシスについて講述する。人々の移動の自由と都市活力の増大への寄与を目標とし,財政・環境・物理の各制約条件を満足する交通ネットワークの計画・整備・運用・管理方策について講述する。特に、需要予測手法、ネットワーク計画の評価手法および信頼性解析手法、交通マネジメント方策等に関わる工学的方法論について解説する。
  • 都市づくり計画論
    都市に関する都市経済学、土地経済学、交通経済学などの理論を計画論的な視点から講述すると共に、コミュニティにおける都市づくり計画に関する理論と手法についても解説する。また施設整備だけではなく、都市計画法、建築基準法などに基づき、規制や誘導や、財源・制度論などの都市政策手法を示す。さらに、都市づくり計画の実践能力を養成するため対話型の講義もおこなう。
  • 都市社会調査論
    都市地域計画、運営にあたり、交通状況などの物理的現象のみならず、様々な社会的現象、人々の意識等を、適切に設計された調査を通じ、的確に把握することが必要となる。社会調査の標本設計、質問票設計、結果の統計解析などについての基礎的理論を概観し、都市社会計画で広く用いられてきた交通行動調査、時間利用調査、意識調査等に触れる。これらに加え、自動車交通流、歩行者流、施設入れ込み客等の調査手法、さらにビディオ画像やGPS等の新技術を用いた調査法を概説する。
  • シティロジスティクス
    都市における物流は、一方でグローバルな競争にさらされながら、他方で交通渋滞・環境・省エネルギー・労働力不足などのさまざまな問題を抱えている。そのような困難な問題を解決し、効率的で環境にやさしい都市物流システムを構築するためのシティロジスティクス施策について講述する。施策を評価するための数理モデルの構築、交通ネットワークへの適用およびその評価手法について述べ、ITS(高度道路交通システム)を活用した新しい都市物流計画論を展開する。
  • 都市法システム
    土木計画にまつわる政府の役割としての公的規制について説明する.公的規制が必要となる要因として外部経済性,自然独占,情報の非対称性,公共財について解説する.その上で,自然独占等への対応としての経済的規制や,外部性への対応としての社会的規制の意義とその経済学的な意味づけについて講述する.また具体的な料金規制や法律による規制等が,土木計画学における諸問題にどのような意味を持つのかについて説明する.
  • 防災情報特論
    危機管理(リスクマネジメント・クライシスマネジメント)としての防災の観点から、わが国及び諸外国の災害予防および災害対応の現状と、その中での情報課題について講述する。特に、防災における情報の意義と防災情報システムへの具体的適用例、及び災害時などの危機的な社会状況における人間の心理過程を的確に組み込んだ情報処理のありかたを論ずる。

ライフライン工学群

  • 地震工学
    都市社会に重大な影響を及ぼす地震動について、地震断層における波動の発生に関するメカニズムや物理的条件、伝播特性・当該地点の地盤の震動解析法を系統的に講述し、弾性論に基づく地震動評価から半経験的な入力地震動の合成法に至るまでを網羅的に解説するとともに、構造物の基本的な地震応答特性を把握するための地震動の波形分析・波形処理や、地震力を享受する構造物の弾性応答から弾塑性応答に至るまでの応答特性を系統的に解説し、あわせて地震工学に関する現在の最新の研究方法と研究成果を講述する。
  • サイスミック・シミュレーション演習
    都市基盤施設の地震時安全性評価の基本となる地震応答解析や地震動シミュレーション法についての演習をおこなう。まず、必要となる理論を解説し、数人ずつのグループに分けた上で、それぞれのグループで照査すべき対象構造物を選定させる。考慮する断層を指定し、その断層から発生する地震動を実際に予測させた上で、入力地震動を設定させる。最後に地盤を含む構造物系の地震応答解析をおこない、耐震安全性の照査を実施させる。
  • 構造ダイナミクス
    ライフライン構造物の振動問題や動的安全性の問題を扱う上での理論的な背景となる、構造システムの動力学、およびそれに関連する話題について講述する。線形多自由度系の固有振動モードと固有値解析の方法、および自由振動と動的応答の問題について述べるとともに、非線形系の動的応答特性、計算機による動的応答解析のための数値計算法、不規則入力に対する構造物の応答の確率論的評価法、および動的応答の制御の理論を取り上げる。
  • 都市供給工学
    水道、ガス、電力さらに食品などの都市機能源の供給問題について、安定・効率的供給のために要求される技術、および安全確保のための技術を講述する。民営化などの動向と確保すべき公共性についても共に考えたい。また本科目では、これら技術問題の理解をもとに、さらに、環境計画における情報公開の技術や住民参加型計画の方法の理解、修得をめざす。例として水道水質問題をとりあげ、そのリスクコミュニケーション手法について論ずる。

社会基盤マネジメント群

  • ジオプロジェクト論
    都市の生活と社会活動を支える地盤構造物の役割と機能について、最新のプロジェクトを例に解説する。さらに、これらの地盤構造物の設計における基本的な考え方と具体的な設計法についての調査と整理を課題として与えることにより、実際の地盤構造物の設計における基本的な考え方と設計手順に関する理解を図らせる。   
  • ジオコンストラクション   
    都市基盤設備の建設、リニューアル、維持・補修における最新技術を取り上げ、その開発経緯と特徴、ならびに適用性について解説する。さらに模擬コンペ形式で、地盤構造物の建設や維持補修に関わる特定の課題に対して新技術を考案させ、その実用性と効果を受講生間で討論させることにより、技術開発に対する素養を養っていく。
  • 開水路の水理学  
    河川流域マネジメント及び都市流体アメニティ空間設計に必要なシミュレーション技術に関して、開水路・管路及び地下水水理学の基礎理論を講述し、最先端の研究事例を紹介するだけでなく、河川流のモデリングと洪水流・氾濫流解析、平面2次元河床・河道変動解析、浸透流解析などの典型的な具体例を取り上げ、シミュレーション法の基礎と計算プログラムの実行までを説明する。
  • 都市水文システム   
    都市の水環境問題を解決するための基礎として、都市域における水文循環と水環境保全に関する工学的・システム論的手法について講述する。特に、降雨流出現象から地下水流動を含めた都市の水文循環と植物による吸収・蒸発散等の水文素過程、汚濁物質の流出解析と発生源から受水域までの流出伝播過程のモデル化および制御策の評価、降水や下水処理水等の再利用を考慮した将来的な都市域における水利用システムのあり方、都市水害を防止し水循環を整備するためのシステム論的計画手法について具体的に解説する。
  • 流域計画・管理論   
    水資源に関わる諸現象のメカニズムとその利用方式を水資源システムとして捉えることの重要性と有効性について講述する。特に、流域全体における適正な水循環システムを形成するため、水量、水質、生態、景観等の環境諸要素を組み入れた評価手法、シミュレーションモデルおよび総合的流域管理手法等について解説する。
  • 都市水害論   
    大都市域を主な対象として、洪水、高潮などの外水や内水域の豪雨、あるいはそれらの重畳による水害の発生機構とその特徴を都市環境変化と関連付けて解説する。また数値シミュレーションによる都市水害の予測手法や、ハード、ソフト両面から構成される都市水害の防止・軽減策の最新の研究成果や事例の紹介をおこなう。そして都市水害についての考察をとおして、流域保全・開発の概念と結びついた望ましい流域治水のあり方を議論する。  

博士後期課程カリキュラム方針

博士後期課程では、最先端の専門知識や研究能力とともに、社会をリードしていく総合的、国際的な能力を養うため、学生の主体性を重視した内容の科目を配当します。

すなわち、自らが調査・研究した内容を自主的に英語でプレゼンテーションし、また講演会でディスカッションするなどのセミナー科目を開設しています。

社会人学生については、集中講義形式やe-learning形式などの多様な講義形態を積極的に導入就学し易い受講方式を整えていきます。